東京地方裁判所 昭和49年(ワ)7987号 判決
原告 広田不動産株式会社
右代表者代表取締役 広田力一
原告 広田力一
右両名訴訟代理人弁護士 宮島優
被告 テイ・アンド・ケイ・トレディング株式会社
右代表者代表取締役 田中茂栄
被告 有限会社弁天屋
右代表者代表取締役 中村清志
主文
一 被告テイアンドケイトレディング株式会社(以下被告会社という)は原告広田不動産株式会社(以下原告会社という)に対し、別紙物件目録第一記載の土地について、横浜地方法務局溝口出張所昭和四八年七月一九日受付第三三五六二号を以てした所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
二 被告会社は原告広田力一(以下原告広田という)に対し、別紙物件目録第二記載の土地について、浦和地方法務局東松山支局昭和四八年八月一三日受付第一三六一六号ないし第一三六一九号を以てした各所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
三 被告会社は原告広田に対し、別紙物件目録第三記載の土地について、前掲支局昭和四八年八月二七日受付第一四二七六号、第一四二七七号を以てした所有権移転請求権の移転登記の抹消登記手続をせよ。
四 被告会社は原告広田に対し、別紙物件目録第四記載の土地について、前掲支局昭和四八年八月一三日受付第一三六一五号を以てした所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
五 被告有限会社弁天屋(以下被告弁天屋という)は原告広田に対し、別紙物件目録第四記載の土地について、前掲支局昭和四八年一〇月一一日受付第一六八〇六号を以てした所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。
六 訴訟費用は五分して、その四を被告会社の、その余を被告弁天屋の各負担とする。
事実
第一請求の趣旨
一(1) 主文第一項同旨
(2) 仮に右(1)の請求が認められないときは、被告会社は原告会社に対し、金一七六一万九九七〇円およびこれに対する昭和四九年一〇月二二日以降完済まで年六分の割合による金員の支払をせよ。
二 主文第二項ないし第四項同旨
三 主文第五項同旨
四 仮に、右二および三の請求が認められないときは、被告会社は原告広田に対し、金一六〇一万四〇八〇円およびこれに対する昭和四九年一〇月二二日以降完済まで年六分の割合による金員の支払をせよ。
五 主文第六項同旨
六 右一の(2)および四の予備的請求については、仮執行の宣言を求める。
≪以下事実省略≫
理由
一 被告会社に対する請求について
被告会社は終始不出頭であるので、原告らの主張を明らかに争わないものと認め、これを自白したものとみなす。
この場合、まず、本位的請求である登記抹消請求について案ずべきであるが、その理由として原告らの主張する (イ)契約が所有権移転の効力を生じない。(ロ)契約解除、との二つの事由は、訴旨および(ロ)の主張のため弁論再開を求めたことも含めいわゆる弁論の全趣旨から見て、選択的に主張せられていると見ることができるから、ここでは、(ロ)の契約解除について考えるに、この事実が自白せられた以上、被告会社に対する原告らの請求が理由あることは明らかである。
二 被告弁天屋に対する請求について
被告弁天屋は不出頭であるが、陳述を擬制すべきではないにせよ、原告の請求を争う旨の答弁書を提出しているのであるから、民事訴訟法第一四〇条第一項但書にいわゆる「弁論の全趣旨ニ依リ……争ヒタルモノ」と認められ、自白を以て論じることはできない。
そこで証拠を案じるに、≪証拠省略≫により、目録第四の土地につき同被告に原告主張どおりの登記があることが認められ、≪証拠省略≫を総合すれば、少なくとも目録第四の土地が原告広田から被告会社へ、被告会社から被告弁天屋へと転々した経過と、原告と被告会社間の売買契約が適法に解除されたこととは、十分に心証を得ることができる。
民法第五四五条但書は、解除権の行使による当事者の原状回復義務は第三者の権利を害することを得ない旨規定している。本件の事態でいえば、原告と被告会社との間での契約解除は、第三者としての被告弁天屋の権利を害しえない筈である。ただ、これが但書による規定であることに鑑み、その証明責任はこの旨の主張をする第三者にあると解すべきであるところ、被告弁天屋はその旨の有効な主張をなんらしていないのであるから、解除により被告会社が無権利となった以上、「被告会社は真の所有権者ではないから、被告会社と被告弁天屋との間でなされた登記も抹消されるべきである」との原告主張に対する抗弁は存しないことになり、結局被告弁天屋に対する原告の請求もこれを認容すべきである。
三 よって、その余の判断に及ばす、原告らの本位的請求を認容し、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条、第九三条第一項但書後段に従うこととして、主文のとおり判決した次第である。
(裁判官 倉田卓次)